サバイバルキット開発


 サバイバルキットとは、山歩きなどの際に不慮のアクシデントに見舞われ、主装備を 紛失・破損した場合等に備えて携行する非常用のツールパックのことである。
万が一の時のための御守り的な性格から、何より軽量・コンパクトであることが求められ、また同時に最悪の場合はこれ一つで数日間の生存が可能なだけの内容 が必要とされる。
山屋の人たちの間では古くから『ピンチ缶』などと呼ばれ必携品とされているが、本格的な山行でなく裏山でのハイキングとか山菜採り等、宿泊を前提としない 場合であっても携行するのが望ましい。山の天気は急変しやすく、何が起こるかわからないからである。実際の遭難を見ても、ハイキングに毛の生えた程度から のケースが多くを占めているのだ。
まぁ実際に使用する機会があるかどうかはともかくとして(もちろん使わないに越したことはないのだが・・・)これには『心構え』の意味も小さくない。クル マを運転する時にシートベルトを締めるようなもんだ。アレには安全面での実効だけでなく「安全運転するぞ」と気を引き締める効果があると思う。何故かたま たまシートベルトをしていない時に限って大事故に遭遇したりする・・・人間の『運』なんてそんなものだ。逆にシートベルトをしていて事故ったら「シートベ ルトしてて良かった!」と思える。
運動前の準備体操も同じだな。結果論に過ぎないと言われるかもしれないが、事実、怪我をするのは決まって準備体操を軽視する者なのだ。

 さて、サバイバルキットと言うと、市販品の物をそのまま使うか、
自分で必要な物を厳選した自作品か、もしくは市販品に適当な物を追加して組むか・・・のいずれかということになる。
そのあたりをそれぞれ比較してみよう・・・ってのが今回のネタである。

まずは市販品を見てみよう。サンプルは7〜8年ほど前に3000円くらいで購入したBCB社の製品
(英国製)である。この道では有名なメーカーで、1000円台で買える裁縫セットに毛の生えたようなモ ノから、軍用レベルのヘヴィーな代物まで幅広くラインナップしていた。今はEPIに吸収されてしまったみたい。

レスキューパック1ケー ス寸法は110×80×25(mm)。市販品では一般的なサイズ。重量は150gとなっている。
一応防水仕様。このケースは調理用の鍋となるようにコーティング処理がされている(ようなことが書いてあるw)
蓋の裏側はシグナルミラーとして使えるように磨かれている。
レスキューパック2中 身を見てみよう。
結構色々なモノが詰まっている。
防水マッチ10本、ロウソク、外科用メスの刃、粘着性包帯、脱脂綿2枚、絆創膏3枚、乾燥スポンジ(水を含ませると膨らむ)、ナイロンコード10m、折畳 みハサミ、ブックマッチ、ホイッスル・・・
画像の内容意外にA4版ほどの合成樹脂製の袋が2枚、簡単なサバイバルマニュアル(飲料水の入手方法とか、救難信号の発し方など。記述が英語なので読め ん!)が収まっ ていたが、どっかに消失した。

まぁとりあえず思いつきそうな品物は大抵揃っていると思う。
あとはこれらに簡単な裁縫道具と安全ピン3本程度を追加すれば、ほぼ満足ゆくレベルになる。

欲を言うなら釣針&釣糸数メーターを加えたいところだが、
ケー スの大きさに余裕が無いのでこの程度が限界。
市販品を買うならケースの容量に多少余裕があるものを選んだ方が無難だと思う。あとで自分が必要だと思う物を追加できるからね。
ちなみにこのキットは、常時クルマのグローブボックスの中に放り込んである。


 もうひとつ。なかなか面白いシロモノを紹介。
よくある防水マッチケースにホイッスルとコンパスをくっつけたような、一見するとアイディアのみに頼ったオモチャ的な製品だけど、これがなかなか的を得て いるというか、結構感心した。

サーヴァイヴォU1目立つオレンジのプラ スティック製で、全体的な作りはかなり安っぽい。いかにも支那製ってな香りがプンプン漂っている(笑)
『サーヴァイヴォU』というのが製品名らしい。ってことは『T』もあるのか?

一応マッチケースってことになってるが、別に何を詰め込んでも構わないのは言うまでも無い。とりあえず防水。

サーヴァーヴォU2中身は俺が適当にチョイスして詰め込んだ物。
接着剤を塗って防水処理したマッチ、安全ピン×2、絆創膏、釣針、釣糸3m、細目の仏壇ロウソク・・・なんかを収納してみた。
まぁ気休め程度だけど、イザという時には頼りになるにちがいない。

筐体の側面に付いている黒いモノはフリント(火打石)
蓋のコンパスは微妙にズレていてアテにならない。裏側には申し訳程度のシグナルミラーを装備。

良く言えばオールインワン、悪く言えば総花的って感じだけど、総合的には「使える」シロモノだと思う。
この程度の物なら常に首から提げて携行しても負担にならな いから、ちょっとした山歩きなんかに携行するには手頃では ないだろうか?遭難した時を考えると重要なのが『被発見 率』を高めることであるから、ホイッスルを中心にした構成 は悪くない。
同じような理由で、地震などに見舞われ倒壊した建造物の下敷きになった際も、ホイッスルを吹きながら救助を待つ のが有効なことは、数々の震災の実例が証明している。ま た、日常では防犯警笛の代わりにもなるので、俺は普段から バッグの隅に突っ込んで持ち歩いている。


 とりあえず一般的な登山や山歩きレベルならば、上記のBCB製品と同程度の市販のサバイバルキットに適当なアイテムを追加した物で充分間に合うと思う。 さ らに軽度の山歩きならばサーヴァイヴォと言ったところか。
キャンプの主装備と同じく、あまり様々なシチュエーションを想定してあれもこれも持って行こうする愚は避けなければならない。ましてや、サバイバルキット が肥大化し て主装備を圧迫するようでは本末転倒である。
サバイバルキットはあくまでキャンプ主装備の補助に過ぎないのだ。現実的に考えて、主装備を全て紛失ないし破損することなど考えられないのだから、自分の 主装備と照らし合わせて本当に必要な物だけ厳選して組みたい。

・・・これらのことを踏まえたうえで、以下の文章を読んで欲しい。

 何を隠そう、俺はサバイバルキットマニアである(笑)
片手に収まってしまうような小さな箱から、考えられないほどの様々なアイテムが飛び出す様には心が躍る。まるで魔法の箱のようでワクワクする。
限られた容量の中に、極力多彩なシチュエーションに対応するアイテムを取捨選択してゆくプロセスにはパズル的な面白さがある。
俺はこの完璧と妥協の葛藤する頭脳的なゲームの虜となってしまったのである。

より優れたサバイバルキットを作りたい!
最強のサバイバルキットを作りたい!
極端な話、主装備を全て喪っても、これさえあれば生きてゆけるってくらいのサバイバルキットを!

・・・これは、至高のサバイバルキットを求めて、同じくサバイバルキット求道者である友人Dと俺とで
研究と失敗を繰り返して開発した、現時点で考え得る限りを尽くした『最善』のサバイ バルキットである。
あえて『最高』とは言わない。まだまだ進化の余地は残されているはずだからだ。俺の挑戦はまだ終わらないのだ。

メスティン←画像左側。
文字通りギリギリまで中身が詰め込まれている。このようにギッシリ詰まっている様を、我々求道者の間では
巍四裏(ぎし り)』と呼ぶw

サバイバルキットのキモとなるケースには、トランギア・メスティンをチョイス。
小さくないサイズだが『これだけで生きてゆける』だけの内容を収めるにはこれくらい必要。
ちなみに、蓋の裏側はヤスリで面を荒らしてあるため、鉛筆で筆記できる。僅かなスペースも無駄にしないのが巍四裏屋(ギシリスト)の真髄なのだ。

サバイバルキット1←中身をぶちまけたところ。
あまりに巍四裏な故に、一旦出すと収納に苦労する。俺でなければ二度と収められないであろう。

上段左から・・・大判の脱脂綿×3、ナイロンコード 10m、ソリテールライト、ヴィクトリノックス・キャンパー、ブックマッチ、A4版のビニール袋(ジップロック)×3、アルミ蒸着ブランケットシート、綿 棒×2、靴紐(平紐)、アスピリン錠剤×5、鉛筆。

中段左から・・・包帯用大判粘着テープ、釣りセット(釣針、釣糸、錘、小型のサイリウム等)、真鍮線5m、ワイヤー鋸、
絆創膏大・中×3づつ、鏡。

下段左から・・・粘着テープセット、プラスティックケース(後述)、エスビット、エスビット用固形燃料。

サバイバルキット2←エスビットとプラス ティックケースの中身。
エスビット(左)の中には、マッチ箱、固形石鹸、医療用接着剤(止血・消毒剤)、マグネシウム製発火具が巍四裏。

さらにマッチ箱(真中)には、ロウマッチ、ワイヤー鋸のリング、小型の折畳みスプーン、石や木材にも書けるメタルチョーク(昔よく駄菓子屋に売っていたロ ウ石みたいなもん)を収納。

前述のプラスティックケース(右)は、ロウソク、安全ピン×3、ホイッスル、粗塩を収めてある。エスビットの燃料ケースを流用し、防水に加工した物だ。

サバイバルキット3←粘着テープセットと ブックマッチの詳細図。
細い竹串にそれぞれ包帯用テープ、ガムテープ、ビニールテープを巻きつけてある。

ブックマッチの方には裁縫用の糸と釣り糸が巻きつけてある。
さらに・・・
サバイバルキット4← ブックマッチの拡大図。
折り目のところに注目!
裁縫用の縫い針が隠されているのがわかるだろうか?
金色に光っているモノがそれだ。このアイディアは友人Dの発案。
思わず頬が緩む・・・まさに巍四裏の真骨頂。

これらを見てもらえば、何より『火』を重視して組まれていることがよくわかるだろうと思う。
やはり生身の人間が自然界で生きるうえで、一番最初に必要とするのは火なのだ。逆を言えば、火さえ起こせれば何とかなる。寒さを凌ぎ、明るさをもたらし、 住環境を乾燥させ、危険な動物を遠ざけ、煮沸消毒で飲料水を確保し、傷んだ食物を殺菌する・・・。その気になれば丸太を焦がしてくり貫き、丸木舟を製造す ることすら可能である。
火にはこれほど幅広い用途があるのである。人類誕生以来、最も古くから活用されている『道具』は伊達では無いのだ。さらに、遭難等の際には、煙によって捜 索隊の発見を促す効果も忘れてはならない。やはり遭難から脱出するためには、捜索隊に発見してもらうことが第一である。巷の多くのサバイバルキットに、シ グナルミラーやホイッスルが必ず含まれているのはこうした理由からだ。

医薬品類はあえて最小限に抑えてある。どうせ重度の障害を負った場合、素人レベルでは一刻も早い救助を待って専門家に診てもらうしか無いということで割り 切った選択である。
アスピリンを含めているのは、俺に偏頭痛の持病があるから。普段何らかの薬を常用している人は、それらをサバイバルキットに納めておいた方が良いと思う。
逆に特定の薬にアレルギーがある場合は、その旨を記したメモを準備しておく。意識不明の状態で救助される可能性を考慮してのことであるのは言うまでも無 い。

裁縫道具や安全ピン、粘着テープ、針金等はキャンプ道具を補修するのに重宝する。『泣きっ面に蜂』といった諺もあるように、遭難した際などに限って、いき なり道具がブッ壊れたりするものである。
救助を待っている間の長い時間を、裁縫仕事に没頭することで忘れるというのも良いかもしれない。何かの小説でそんな話を読んだことがある。

あとこれら以外の物はお好みで良いと思う。ナイフやロープなど、一つで多くの種類の用途を持つ物を中心に。
釣道具や小動物を捕獲するための罠は、非常時に期待するほどの成果を得られるとは考えにくい。あくまで気休め程度と思っておいたほうが無難だろう。水さえ 入手できれば、食事なんぞ一週間やそこら摂らなくても死ぬようなことは無い。水は雨水を利用したり、河川や池の水を煮沸消毒できれば無限に得られるのだか ら。


 ・・・先ほども言ったが、このサバイバルキットはまだ完成形ではない。これからも日々進化してゆくのだっ!
目下、小型で信頼性の高い磁石(コンパス)を物色中であ る。また機会があれば続編を書くかも。

<更新>
なかなか良い小型コンパスを見つけたのでキットに追加。Recta(レクタ)というコンパス専門メーカーの製品なので信頼性は充分。mm&inch表記の スケール(定規)と虫眼鏡と温度計が付いている。
85×30(mm)と、サイズが若干大きめなのが気に入らない。温度計いらねーよ。虫眼鏡は火起こしにも使えるから許す(笑)また着火具が増えたぜ。むは はは。
そのうち気が向いたら画像追加します。

>ほかの話も読んでやるか。

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